こんにちは、しろいるかです
今回は長崎で炭坑の島、池島での日帰りツアーの体験をひとつの記事にまとめて振り返りたいと思います。
初日のお宿、天空の船の宿泊記
二日目の天草の旅
三日目~四日目の長崎市観光
※2023年8月追記 かあちゃんの店が2023年3月いっぱいで、お店の老朽化による解体とともに閉業するそうです…。時代の流れなのか、寂しいですね…。池島自体あと10年もすれば建物の老朽化がさらに進んで見学自体出来なくなる気もします。ぜひ行ってみて!
軍艦島へのあこがれ
廃墟には漠然とした憧れがあります。怖いんだけど、不思議な魅力がある。廃墟の女王として有名な摩耶観光ホテルの樹々に埋もれていく幻想的な雰囲気、九龍城の異界に通じてるような雰囲気(廃墟じゃないけど)。もちろん、軍艦島も例外ではなく、いつか行ってみたい場所のひとつでした。
炭坑の島として発展し、1960年代にはわずか外周1キロちょっとの島に5000人を超える人々が居住。日本最古の鉄筋コンクリートの団地が密集して建てられ学校や映画館、病院などその島で全てが完結するという信じられない発展ぶりを見せながら、エネルギー政策の転換によって1974年に炭坑が閉山後、数か月で全島民が流出し無人島となって以降放置され現在に至るという、経緯を聞いただけでもゾクゾクするような廃墟です。
そんな軍艦島ですが、2015年にまさかの世界遺産に登録。すっかり観光地化されてしまい、オフィシャルに上陸ツアーを催行する会社がいくつもできるというなんだか不思議なことになりました。廃墟好きって意外といるのかな…?
近年は廃墟についても考え方が見直されて観光資源として整備されるところも増えており嬉しい限りですが、昔のようなアングラな雰囲気が薄れて少し寂しい気がしないでもないです。
さて、軍艦島に上陸と言っても、島の中心部は建物の倒壊の恐れがあるため行けるわけではなく、あくまで外周に作られた見学通路から建物を眺めるにとどまります。
そういえば昔のインターネットには漁船とかでこっそり軍艦島に上陸して内部の写真を撮っていたようなブログも沢山あった…。
昔は色んな意味でおおらかだったね。
今回の長崎の旅、内部見学こそできないものの軍艦島に行かないわけにはいかない!
軍艦島へのアクセス
各ツアーが催行する軍艦島クルーズに参加するのが唯一の方法です。ツアー会社は5社ほどあるようで、船のサイズや設備、出航場所などが微妙に違うなど各社特色を出しているようですが、基本的に上陸して、見学通路を歩くという点においては変わらないのであんまりこだわらなくていいかもしれません。
私たちは軍艦島コンシェルジュという、最新技術で軍艦島をより深く楽しめるミュージアムも運営されている会社のクルーズにしました。
軍艦島ミュージアム。ちゃんぽんの四海樓とか、グラバー園の近くなので好立地。
が、この軍艦島クルーズ、実は欠航したり、出航したものの上陸できないことがあります。軍艦島は潮流の激しいエリアのようで、風が強かったりすると欠航しがちみたい。
そして、今回の旅では残念ながら欠航になりました…。欠航かどうかは当日の天候で決まるので、ギリギリまでわかりません。私たちは当日の早朝にショートメッセージがあり、欠航がわかりました。
一応欠航時には全額返金されるので安心なのですが、人気のツアーということもあって振替えしようにも空きが無く結局参加できず。。
軍艦島ミュージアムは空いていたけど、次回軍艦島行くときにとっておくことにしました…。
残念無念。。
池島炭鉱ツアー
軍艦島の近くにもうひとつ、炭坑で栄えた池島という島があります。軍艦島に隠れてあまりクローズアップされませんが、こちらも炭坑と共に発展し、閉山とともに衰退した歴史を持ちます。
軍艦島と違うところはいくつかありますがピックアップすると
- 島の面積は軍艦島の約16倍(それでも小さい島)
- 閉山は2001年と比較的最近で、遺構もしっかり鉱山会社に管理されている
- 有人島で、まだ100名ほどの島民が居住している
- 実際に島の内部や坑道を巡り、当時の雰囲気を味わうツアーがある
4つ目がポイントで、島の規模は大きいので軍艦島のような密集感はないものの、目を見張るような鉱山遺構や、廃墟群を間近で見ることが出来ます。また、島の中を実際に島に住んでいたガイドさんに案内しながら周ることができ、当時の島の生活や雰囲気をより深く感じ取ることが出来ます。
これは行くしかない!ということで、池島ツアーも申し込んでいました。
ツアー自体は公益法人が企画する、長崎さるくというページから予約できます。
長崎さるく – 「ながさき」を歩こう!長崎さるく公式ホームページ
ツアーは坑道体験のみと、坑道体験に島内案内付きの2種類ありますが、島内案内つきのものをおすすめします。自分で島内探検もできますが、ツアーのみ行ける場所等にも案内してくれますし、こういうバックボーンとセットで語るような場所を見るときのガイドさんの有無はかなり大きいと思います!
池島へのアクセス(神浦港)
ツアーに申し込んでも、池島へは自力で行かなければなりません。
長崎から行くのであれば、基本的には神浦港(こうのうらこう)から出ているフェリーを使うことになります。佐世保やハウステンボスから行く場合は瀬戸港という港の方が近く、そちらからもフェリーが出ています。
さて、長崎市から神浦港までのアクセスは自家用車だとだいたい1時間弱、長崎駅からバスが出ていて、バスだと1時間40分ぐらいかかるみたいです。バスの場合はフェリーと連絡できる時刻表になっているので安心。
神浦港の周りには基本的に何もないです。コンビニも無いです。ここで実体験にもとづく注意点が・・・。
池島の中には基本的に飲食店や売店はないのですが、島内探検も含めたツアーの場合、昼食タイムがあります。お弁当をオプションで付けることもできるのですが、つけなかった場合は自分で何か食べ物を買っていく必要があります。
しかし、神浦港では食べ物を買う場所が無く、お昼にひもじい思いをすることになってしまったので、オプションでお弁当をつけない方は途中コンビニでごはんを調達しておくことを忘れずに!
探せばもしかしたらあったのかもしれないけど、少なくともぱっと見は無かった。。
神浦は、こんな感じの小さな漁村。
フェリーの規模はそこそこ大きく、車も乗れますが、島内で使うことはないので港に置いていきます。
この日は朝から天候が悪く、軍艦島クルーズも中止になるほどでしたが、こちらは無事運行していました。よかった。
池島ツアー:イントロダクション
なんの奇跡か、島に着くまでは小雨が降る悪天候だったのに、島についたとたんに一気に晴れ渡りました。
こちらは島唯一の港。もともとあった鏡池という池を掘って湾にし、大型船が入れるようにしたそうです。
緑の船が乗ってきたフェリー。島の高台には既に鉱山遺構らしき廃墟が見えます。
島につくとツアーの案内の人が待ってくれていて、そのまま5分ほど歩いて公民館のような施設に移動します。公民館は撮ってなかったですが、こちらは隣の建物。自販機があるのは島ではここだけなので、もし水を持ってきていなかったらここで確保ですね。
ひととおりのラインナップは揃ってた
公民館的な建物の中で、簡単な説明を受けます。このツアーは三井松島産業という、当時この池島の炭坑も含む周辺の複数の炭鉱を経営していた会社の子会社が実施しているようです。
もともと池島では閉山後にも、残った施設がアジア諸国へ炭鉱技術の研修事業などに活用されており、その中で一般向けにもツアーを組むようになったのだとか。閉山した炭坑にもそういう役割があるんですね。
当時このあたりは炭鉱がたくさんあって、各社しのぎを削っていたんだね
ここではガチの研修ビデオ(10分ぐらい)を見せてもらえます。当時の炭鉱の様子を写した動画や、採掘技術が説明されていてなかなか興味深かった。
ちなみにこの後、この島唯一のお土産であるクリアファイルの宣伝があります。後で買おうと思ってると忘れるので記念に買っておきたいところ。
坑内体験を終えたらすっかり忘れてしまっていて、結局買わずじまいだった
池島ツアー:坑内体験
さて、一通り説明を聞いたらまずは坑内体験です!
歩いて数分の場所に坑道に繋がるトロッコがあります。
のどかな島です。
奥に見えるのが火力発電所跡。もともと電力は本土から送電されていたそうですが、緊急時に備えて自家発電可能な強力な発電設備を備えていたんだとか。幸いにも利用されることはなく、閉山とともにその役目を終え、今は静かに朽ちています。
そして、手前の緑色の車両が坑道に向かうトロッコです。
このトロッコで向かうのはさすがに本物の坑道、ではなくアジア諸国の研修のために切り開かれた坑道みたいです。
本物ではないといっても入口の見た目はガチです。
ちょっと震えてきた
坑道に入り、少し走ったらトロッコを降ります。
当時使われていた設備や工具の説明をしてくれながら、先に進みます。
よくわからない機械がいっぱい。
一通り説明が終わり奥に進むとぶっそうなモノが。コイツはドラムカッターと呼ばれる機械で、硬い岩盤を掘り進むために使われるそうです。実際に回転させてくれるのですが、バッテリーを見学用の低出力のものに付け替えているそうで、非常にゆっくりとした速度で回転してくれるので安心です。(迫力はないけど・・・)
ヨシ!と安全確認してから起動ボタンを押す体験もできて楽しかった。
さらに進むとこちらは穿孔機、オーガーと呼ばれる機械で、ダイナマイトを入れるための穴を掘削したりするのに使うそうです。実際に動かす体験もできますが、振動と音が凄かった。
地上に通じる竪穴。光が見えるとホッとします。
緊急避難小屋も再現されていました。こちらは万一メタンガス等の有毒ガスが放出されてしまった際に工員が避難する場所だそうで、一通りの災害グッズが置いてあります。
こちらはダイナマイトを発火する場所。ダイナマイトは直接着火したりはせず、全て電子制御で爆破させていたそうなので、遠隔で起動ボタンを押します。
時間にして数十分ほどですが、終わって地上に出てきたときの安堵感が凄いです。このような過酷な場所で昼夜問わず労働していた当時の鉱員の苦労が偲ばれます。お給料も当時の水準からすると物凄く多かったそうですが、それほどの対価が必要となる場所だと思えます。
貴重な体験ができた
ここならではかな
池島ツアー:島内案内
さて、坑内体験後は昼食タイムを挟み、島内案内に向かいます。昼食タイムでは私たちともう一組以外はほとんどお弁当を予約していて、完全にミスった…。自販機で甘い飲み物を買ってカロリー補給しました。
さて、島内案内では島の中心部に車に乗せてもらい移動します。現在ほぼ全ての住民は港周辺に居住しているそうで、島の中心部には廃墟となったコンクリートの団地群などがそびえています。
こちらは現役の郵便局。人がいる場所には郵便局もインフラとしてちゃんと整備されているんですね。
ボーリング場の跡。ガイドさんがはじめてボーリングをしたのもここだと仰っていました。
公民館。こちらはまだ使われている建物で、なんと宿泊も可能なんだそうです。確かにツアー参加者の中には前泊していた方もいました。お風呂はないけど、島内に銭湯が存在するらしい!ツアーではそちらには訪れませんでしたが、見てみたかったなぁ。
こちらは商店街。様々な商店や、焼肉屋さんなんかもあったそうです。
いよいよ団地群の中に入っていきます。既に植物に侵食されている建物が見られます。
その中でも損傷の少ない建物の中に入れさせてもらえました。これはツアー限定ですね。
中の部屋は見ることはできませんが、当時使われていた「安眠中」の札がかけられていました。これは三交代制をとっていたため、日中に睡眠をとる人に配慮するもので、セールスマン避けにもなっていたんだそうな。
最上階の部屋に入ることが出来ました。こちらは島民の方からの協力で当時使われていたものなどが展示されています。
昭和の台所って感じですね。
父親の職業はみな何かしら炭鉱に関わる仕事をしているので、小学校で発表される「わたしのおとうさんの仕事」的なやつも必然的に炭鉱関連の作業が細分化されて紹介されてます笑
ガイドさんからも、炭鉱マンとひとくちに言っても職種が色々あることを教えてもらいました
職種によってやっぱりお給料もいろいろ違ってたらしい
さらにちょっと心配になる非常階段を抜けて・・・
屋上にもあがらせてもらえました。見渡す限りのコンクリートの建物はほぼすべて廃墟。
とても大規模な団地だったようです。
遠くには炭鉱の設備のひとつ、採炭所も見えました。
建物を抜け、建物の間を通りながらすすみます。
完全に植物と一体化した電柱。これ、使えるのかな・・・。
大きな更地に出ました。ここには巨大なショッピングモールがあったそうで、映画館やデパートもある島の一大スポットだったんだとか。奥に残る建物は中学校だそうです。
島で唯一の食事ができる場所、かあちゃんの店に案内していただきました。ここで少し休憩。
壁には島を出ていく人たちからのメッセージなどがたくさん刻まれていました。
店の前のベンチには仲良くお昼寝中の2匹が!他にも島には猫がたくさんいました。
島民より猫の方が多そうな勢い
ふたたび、団地の間の細い道を抜けていきます。道に沿って設置されている錆びている物体は送水パイプだそうで、人口増加が急すぎるため水道管を埋めている余裕がなく、このように電線のように這わせるつくりになったんだとか。
直射日光を浴びるので、夏はほとんどお湯しかでなかったそうです笑
植物に侵食され、もはや道なのかわからないような場所を潜り抜け・・・
展望台に出ました。
展望台から見えるのは巨大な立坑エレベータ。あの巻き上げ機で人や物資を地下深くに輸送していたそうです。
立坑エレベータに向かう道。かすれて消えかかっていますが「ご安全に」と書かれています。ガイドさん曰く、ここの階段がとにかく急で大変だったそうな。
島で最も最後に建てられたのがこのマンション。この建物は面白いつくりをしていて、こちら側から見ると4階建てなのですが、実は崖に沿って作られており、8階建ての建物なのです。最後にじっくり眺められるそうなので、ひとまずこのまま先に進みます。
立ち入り禁止区域ですが、先ほどの立坑エレベータのある場所へ案内してもらえます。
すっかり晴れ渡って青い海と青い空。
間近で見る立坑エレベータは迫力があります。手前にあるのは女神像「慈海」です。この女神像の見つめる先は、実際に海底炭鉱が伸びて掘削されている場所だそう。よく考えられていますね…。
この奇妙な建物がさきほどの4階建てのマンションです。反対側から見ると8階建てのマンションになっていて、なんとも奇妙なフォルムをしています。
この幾何学的な感じのつくりが独特ですね。ちなみに塗装がある部分とない部分について、これは塗装途中で閉山が決まり、作業が途中で取りやめになってしまったことでツートンカラーのようになったんだそう。
このマンションの見た目、なんだか見ていてゾクゾクする
一通り2時間ほどの見学を終えて、港に戻ってきました。港の待合室には島の模型があって、このあたりを歩いてきたよね、と見て分かるなかなかの精巧さ。
帰りは高速船でした。
この池島でのツアー体験は非常に心に残るものでした。日本の高度経済成長期を支えた炭鉱の輝かしい歴史とその衰退、いまも残る当時を偲ばせる島の雰囲気。
万人受けはしないけど、軍艦島に興味があるなら、是非池島にも足を伸ばして体験すべきなお薦めツアーです。
ほんとうは翌日の軍艦島クルーズで、それぞれの島の違いを見つけたり、色々楽しみたかったんだけどね
軍艦島クルーズ欠航は残念だったけど、次の長崎観光の楽しみにとっておこう