こんにちは、しろいるかです近畿旅行の五日目の夜は、江戸時代の三大遊郭と呼ばれる古市遊郭に今なお残る麻吉旅館に宿泊しました。素晴らしい旅館だったので宿泊だけでひとつの記事にまとめます!
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古市遊郭とは
江戸時代、お伊勢参り(おかげ参り)と呼ばれる、伊勢神宮へお参りに行く巡礼旅が全国的に流行ったそうで、年間数百万人もの人が伊勢神宮へ押し寄せました。現代の伊勢神宮(内宮)への参拝者数は2019年で約550万人。当時の江戸時代の日本の人口は約3,000万人と言われ、街道が整備されているとはいえ、全人口の6分の1にあたる人たちがお伊勢参りを行っているとは、信じられないほどブームだったんですね。
そんなお伊勢参りは老若男女問わず行われていましたが、参拝を終えるまでは節制し身を慎んでいた人たちが、参拝後に遊びまくる場所として遊郭が発達しました。
伊勢にある古市遊郭は江戸の吉原、京都の島原と並ぶ三大遊郭として栄華を極めていたんだそうな。
遊郭というと夜のお店のイメージがありますが、当時の遊郭は女性も楽しめるもので、人形浄瑠璃や歌舞伎小屋が立ち並び、土産物屋や飲食店も溢れるいわゆる繁華街だったそうです。
今でいうと新宿歌舞伎町かな
麻吉旅館
古市遊郭も、今は昔。残念ながら戦争での焼失を経るなどして現在は住宅街になっています。
そんな中、唯一当時の面影を残しながら現在も営業している旅館が麻吉旅館です。江戸時代の古地図や書籍にもその名が載っており、当時は遊郭茶屋として営業していたそうです。
創業当初の建物ではないようですが、江戸末期に作られた建物は重要文化財になっており、麻吉旅館のある一画だけは当時にタイムスリップしたような雰囲気さえ感じさせます。
外観(夜)
到着したのはすっかり日も落ちた夜6時過ぎ。しかし、車の音を聞いてか女将さんが迎えに出てきてくださり、おもてなしを感じました…。
旅館の入口です。この建物は木造五階建てで、斜面に沿って這うように作られています。懸崖造りと呼ぶみたい。
入口が複数あり、なんとも不思議なつくり。どことなく妖艶な雰囲気を醸し出しているのはここが元遊郭茶屋だから、という前情報があるからかも。
この入口から中へ入りました。ちょうど建物の3階部分にあたるようです。
最上階(5階)部分は大広間になっているようで、外からは2階に見えます。
このように建物に沿って階段があり、下へ降りて行くことが出来ます。
なにこの橋!?雰囲気ありすぎる。
階段を下りて下から橋を眺めます。実はこの橋、宿泊するとここを通って食事処へ行くんですよ!
一番下まで降りてきた。かなりの広さですが、現在は旅館としては使っていない部分も多いです。
一番下は蔵になっていて、でかでかと「麻吉」と書かれていました。この蔵には茶屋時代の調度品などの様々な品が貯蔵されており、旅館の建物の中の「麻吉の歴史」と書かれた部屋から入って行って見学することが出来ました。残念ながら内部は撮影禁止だったので写真はありませんが、滞在中に是非見るべき場所です!
内観
中も重厚感を感じさせるつくり。私たちの部屋は廊下のつきあたりにある「櫻雲楼」という場所でした。お部屋の名前からしてもうたまりませんね。
立派なお花。お正月ですからね。
一階下に降りてきました。ここは2階部分かな?この写真の左側の方には、当時の炊事場が残されています。
これが炊事場。実は3階部分と吹き抜けになっていて解放感がとてもあります。
今は使われていないようだけど、今でも手入れすれば使えそうなほど。
3階部分、奥へ行くと水回りがあります。お風呂は何か所かあるようで、各グループごとで貸し切りにしてくださいます。温泉ではありませんが、これほど古いのにしっかり手入れされていて気持ちいいお風呂でした。
まるで迷路のような構造。これほど広い内部を探検しているんですが、人の気配はあまりしません。というのも一日4組ほどしかお客さんをとっていないようです。
ここが4階部分。最上階へと上がる階段があります。
下足箱がありました。当時はここが表玄関的な位置づけだったのかな。
枢密院…内大臣…。明治から戦前までは政府の要人なども宿泊していたのでしょうか。
おびただしいほどの色紙があります。そのほとんどは文人墨客や歌舞伎役者さんっぽい。全然詳しくないのでわかりませんが、きっと凄い人たちの色紙もあるんだろうな。
最後に、懸崖造りの簡易な構造図。なるほど、これはわかりやすい…。
最上階の大広間「聚遠楼」は素晴らしい眺めらしいですが、5階に宿泊されている方がいらっしゃったので、翌朝チェックアウト後に見学することに。
宿泊部屋「櫻雲楼」
到着して通されたのがこちらのお部屋。特に名前とかは無かったけど、きっとこの名前。
とても広いお部屋です。既にお布団を敷いてくれていました。
外観からは想像のつかない快適さ、エアコンに石油ファンヒーター完備です。
不思議な場所に引き戸があるんですが、これが外と繋がっています。ところどころ、当時どういう使われ方をしたのか想像もつかないような独特の建物のつくりを見受けられます。
お部屋の外はぐるっと囲むように回廊になっています。窓などは新しくなっているようですが、窓の外にある手すりのところとか、当時の雰囲気を感じられます。
外の景色はまさかの幹線道路!時代はこうも変わるんですね…。
お食事
夜ご飯はお食事処で。
まさかの空中回廊を進んだ先のお部屋でいただきました。
橋を渡ったところ、襖で隔てられた前室のような場所を抜けると・・・
襖の先に食事処が用意されていました。
個室に上品なテーブル席が設けられており、料亭のような雰囲気。(ちょっと写真がぼけた)
杉村春子さんという方の色紙が飾られていました。全く詳しくないので家に帰ってWikipediaで調べたらすごい方なんですね。演劇界の大スターみたいです。
江戸時代などの書類?が壁紙に使われているところがなんとも雰囲気あります。
お料理が運ばれてきました。お盆がとてもステキです。
お刺身はサワラとタイ。新鮮でコリコリしていました。美味しい!
ワカメも分厚く歯ごたえがあって美味しかった。
そうそう、箸袋もかわいいです。江戸時代の時のデザインをそのまま使っているのだそう。
さざえ。臭みもまったくなくあっさり食べられます。出汁も利いててスープも飲み干したくなってしまうぐらい。
煮魚はブリ。これまた身までしっかり味が染みてて美味しい!
茶碗蒸し。器からしてもう間違いなく美味しそう。どのお料理のお皿にもこだわりを感じました!
中身はアオサとアコヤ貝。どちらも伊勢志摩の名産ですね。アコヤ貝って真珠だけじゃなくて身も美味しいことを知りました。
サワラの西京焼き。これまた焼き加減が絶妙、皮はパリパリで、脂ののった身はジューシーでした。お魚づくしなラインナップなのに、美味しすぎて最後まで飽きずに食べられます。美味しいな~と思うお料理は結構食べる機会がある気がしますが、うまっ!と心が動く料理にはなかなか出会えないと思う。
今回はうまっ!と感じる夕食だった。
あ、そうそうお酒のラインナップも豊富でした。私たちはお酒をあんまり飲まないのでお酒とお料理の相性とかはあまりわからないのですが、きっと日本酒とかと合うんだろうな~。
夜とはうってかわって、朝ごはんはシンプルな感じ。お正月だからごまめに黒豆煮もありました。
焼き魚とだし巻きも。
美味しいですが、朝は食堂のようなところで食べたのであんまり風情は無いかも。
あらためて、夜ご飯の満足度はすごかった
聚遠楼
朝ごはんも食べて一休みしたところで、宿泊していた人がチェックアウトしたので、館内で一番広い大広間、「聚遠楼」を見学しても大丈夫ですよ、とお声掛けいただけました。早速行ってみる。
広い!昔はここで毎晩のように酒宴が催されていたんでしょうね。
立派な掛け軸と牛?の置物。
見晴らしも良く、遠くには朝熊山(あさまやま)も望めます。朝熊山の頂上にはお寺があり、お伊勢参りを終えたらそちらも併せてお参りするのが当時一般的だったようです。
外観(朝)
とてもいいお宿でした。これでお正月三が日に宿泊して一人15,000円って…。予約はかなり取りづらいですが、お伊勢参りをするなら麻吉旅館さんに泊まるしかない!
最後に、チェックアウトしてから明るいうちの外観写真も撮っておくことに。
外から見るとこの上の部分が聚遠楼だったんですね~。
ふむふむ。
朝なのにどことなく妖しい雰囲気?笑
伊勢古市参宮街道資料館
チェックアウトのときに女将さんから近くに資料館があるからよかったら行ってみては、とおすすめされたので行ってみました。古市旅館からは徒歩3分ほど。
旅館からも近いので、当時の姿に思いを馳せながら現在の古市街道を歩きながら行くのがおすすめです。
周りは完全に住宅街になっています。現代までその姿を残している街もあれば全く別の姿に変わっている街もある、なんだか不思議な気分。
外観は作り替えたみたいですが、中にはいるとどうみても元公民館です笑
中は決して広くなく、さっと見たら10分ほどで見終わるぐらいですが、江戸時代のお伊勢参りや古市遊郭に興味を持ったなら楽しく感じると思います。とくに、麻吉旅館にはお伊勢参りに関する本やガイドブックが置いてあり、夜寝る前にそれを読んでいたため、展示物を見ると「あ、これ本で見たやつだ!」となりました。
元茶屋の建物に泊まるのはなかなか出来ない体験だね
全国にはまだ同じように遊郭跡の旅館が何軒かあるらしい。次の旅行で近かったら泊まってみよう!